ワイシャツの歴史

ご存じの方も多いと思いますが、ワイシャツという言葉は、日本以外では使われていない和製英語です。しかし、日本でこのように呼ばれるようになったことには理由があります。この記事では、ワイシャツと呼ばれるようになった経緯も含めて、ワイシャツの歴史についてお話しします。

そもそもシャツとはどんなもの?

そもそも「シャツ」とはどんなもののことを指すのでしょうか。私たちの身の回りには、ワイシャツやTシャツを筆頭に、シャツと名のつく衣類がたくさんあります。生地が違えばシェイプもスタイルも異なるシャツは街中にあふれ、シャツをシンプルに定義することは不可能になっています。ただ、シャツが誕生した頃のことを考えると、シャツと呼ばれるようになった理由は見えてきます。
シャツは「shirt」とつづります。シャツは17世紀にヨーロッパで生まれたとされますが、それ以前は上下一対の衣類を着用するのが一般的で、上半身に着るものを「short」と呼んでいたようです。これが転じてシャツと呼ばれるようになった…と考えられています。言ってみればシャツは、「上半身用の服」ということになるでしょう。

ワイシャツの語源と起源

世界中で着用されているワイシャツですが、ワイシャツと呼ばれるのは日本の中だけの話。日本的にワイシャツを定義すれば、「男性が、主にスーツの中に着用する、ボタンとカフスが付けられたシャツ」ということになるでしょう。
ワイシャツと呼ばれるようになった理由は「聞き違え」だと言われています。英語で「白いシャツ=White shirt=ホワイトシャツ」ですが、これが聞き違えられたことでワイシャツと呼ばれるようになったそうです。シャツが日本に入ってきた当時、英語をしゃべれる人はそんなにいなかったはずですから、聞き違えてしまうのは仕方ありません。日本では以来、ずっとこの名前で親しまれています。
では、ワイシャツの起源はいつなのでしょうか?現在のシャツの形となったのは、すでにご紹介したとおり、17世紀のことだと考えられています。しかし、起源となると古代ローマ時代までさかのぼります。古代ローマには「チュニック」というスリット付きで頭からかぶるようにして着用する服がありました。人々はこれを着て暮らしていたのですが、身分により丈の長さに違いがあったようです。世界史の授業で古代ローマ人のことを勉強した人ならおそらく、このチュニックを着たローマ人の画を目にしているかもしれません。
その後、シャツは中世にかけて、男性のおしゃれ着として進化していきます。日本におけるオーダーシャツも、男のこだわりが反映されたおしゃれ着として、進化を続けていくことでしょう。

ブラウスからシャツ、インナーからアウターへ

ワイシャツの裾の形は特徴的なシェイプになっています。この裾の形状をボトムラインと呼びますが、これには衣類の歴史が密接に関係しています。
ヨーロッパではその昔、男性は下着を着用していませんでした。シャツもズボンも、直に身に着けていたわけです。日本男児はふんどしを着用していましたが、ヨーロッパの男性は、その代わりとしてシャツの裾を利用していました。ワイシャツの裾が、あんなシェイプになっていることにはわけがあったのです。その昔のシャツには、裾のセンターにボタン留め可能なタブが付けられているものもあったようです。シャツが下着の役割も兼ねていた…その名残がワイシャツのボトムラインというのは、とても興味をそそられますね。
下着としても使われていたシャツは、それ以前は女性用に飾りつけられたブラウスでした。日本では、ワイシャツは男性用、ブラウスは女性用、という分け方が定着していますが、欧米では男性もブラウスを着用してきました。男性がベストやネクタイを身に着けるようになると、ブラウスから飾りが消えていきます。そして現在のようなシャツの姿になったのです。ただ、その昔のブラウスはあくまで下着的な位置づけの洋服であり、シャツも考えようによってはスーツの下に着るものですから、位置づけ的には下着というか、インナーと言えなくもありません。しかし、シャツは後に、インナーからアウターへと脱皮することになります。
シャツがまだインナーとされていた頃は、やはりそのまま公衆の面前に出ることは失礼なことでした。しかし、シャツにポケットが付けられてから立ち位置が変わり始めます。スーツのインナーだったシャツが、このポケットによりアウターへと進歩を始めたのです。その決定打となったのは「半袖シャツ」だといわれています。半袖のワイシャツは、完全にアウターとして着ることが意識されたものでした。これによりシャツは、生地、デザイン、ディテールを細かく選ぶことができるオーダーメイドとしての可能性がぐっと広がることとなりました。
ワイシャツにはこのように歴史があります。ワイシャツのオーダーは、現在、インターネット上だけで完結するほど手軽になっています。ワイシャツの歴史に思いを馳せながら、こだわりのシャツをオーダーしてみませんか?